観賞

「令和5年度(第74回)芸術選奨贈呈式」に行ってきました。

令和6年3月、東京都内で、「令和5年度芸術選奨贈呈式と祝賀会が行われました。

演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術(A・B)、メディア芸術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論など12部門、文部科学大臣賞が23名と1組、文部科学大臣新人賞が23名、受賞されました。

盛山正仁文部科学大臣の挨拶によれば、昭和25年から始まり毎年度、今年で74回を迎え、それぞれの分野で大きな成果をあげた方々が受賞し、今年から件数も増やしたということです。

芸術というものが、社会に更に認められたということですね。

その中で、私が注目したのは、大衆芸能部門です。

文部科学大臣賞には、講談師の宝井琴調氏が国立名人会・名月若松城ほかの成果で、歌手の藤井フミヤ氏が40th Anniversary tour 2023-2024ほかの成果で、受賞。そして音曲師の桂小すみ氏が国立演芸場3月中席ほかの成果で、漫談家のねずっち氏がねずっちのイロイロしてみる60分ほかの成果で選ばれました。

贈呈式の後、講談師の宝井琴調氏にお話を伺いました。

講談について、

「いわゆる物語を語るのですが、その幅が広いんです。これが講談の魅力なんです。軍談から武芸もの、義士伝、侠客伝、いろんなものがあるんですけど。そして今若手が新作を作っている、この新作がまたとんでもなく面白いという、だから広がりがあるんです」

そして講談は、

「人を褒める商売でもあります。あの人があそこまでいったのは、こんな努力をしたから、こんな苦労があって、あそこまでいったと他人をほめる商売、我々は幸せです。365日他人をほめて生きているんです。これは健康ですよ、ですから皆さんも是非他人をほめる話を聞きにきていただければ幸いです」

最後に、今1番ほめたい人をたずねたら即座に「仲間ですね。仲間が今凄いですね、個性がある魅力的な高座をつとめているんですよ。彼らを今見逃さない方がいいですよ」とのことでした。

いま、そしてこれから更に注目の講談、そして大衆芸能もっともっと追いかけてみたくなりました。

MOKO/もこ

「講談 伝承の会」開催されました。(東京都)

「日本の究極話芸・講談。その芸は伝承されていく。

東西若手・中堅が一堂に、自己研鑽の成果ここに」

文化庁 令和5年度 国宝重要文化財等 保存整備費補助事業として行われている「講談 伝承の会」が今年も3月上旬、東京江東区で3日間に渡って行われました。

今年の参加者は、受講生の東西の若手・中堅の講談師30名と講師である講談師9名の合計39名。一年間の稽古を経て、その成果を観客の前でという発表会形式の公演です。

演芸評論家の長井好弘氏によれば、亡くなった人間国宝の一龍斎貞水が、人間国宝への200万円の助成金で「若いヤツらのために何かしてやれねえか」と考え出したものだそうです。

もうすでに10年を超え、今年の出演者は受講生である若手中堅だけで30名、1人30分なので、朝10時半から夜6時半まで、途中休憩を挟むものの1日8時間の公演時間となります。3日間とも見る人が多いということでしょうか、今年は少し割引の3日通し券も発売され、購入者には、フェスのような腕輪が渡されました。

いつもは、なんらかの用事があり、途中抜けることもあったのですが、なんと今年は何もなく3日間全て見ることが出来ました。

講談には、流派があり同じ演目でも流派によって読み方が違ったりもするそうです。

講談師の方々は、例えば違う一門の方に習いに行き、その違いを勉強するとのことでした。

見ている方にとっては、やはりいつも見るのはだいたい同じ人に偏りますから、この会でああこういう話もあるのだな、こういう講談師もいるのだなと認識を新たにすることが出来ます。

なんと言っても教えてもらった方たちだけで30名、初めて見る人にも出会える会でもあります。

詳しい内容については、客席で熱心にメモを取っている方も大勢いらしたので、多分その方々がどこかで紹介していると思いますので私はここでは書きませんが、とにかく東京、大阪東西の講談をボンヤリと聞いているだけでも楽しいと思います。その中で、あっこの人好き、この話面白いというものを見つけることが出来ると思います。

ただ注意してほしいのは、講談協会会長の宝井琴調氏曰く、「まだ習ったばかり、これから練り上げてお客様に聞いていただけるものにする、あくまでも発表会なんです」ということ、この伝承の会で聞いた、見た全てが講談と思ってはいけない、観客にとってもこれからどれを、誰を聞こうかという入門の場と言えるのではないでしょうか。

来年のことを言うと鬼が笑う、と言いますが、来年の開催も決まってはいるようです。

是非、チェックしておいて、少しでも興味があったら、見に行ってみてくださいね。

MOKO/もこ

「初代国立劇場さよなら特別公演」第一部開催(東京都)

1966年(昭和41年)に開場した初代国立劇場は、今年(2023年)10月末で、建て替えのため閉場します。

その最後の2ヶ月間、9月・10月の公演として近松半二作の通し狂言「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)が通し上演されます。

9月には第一部として、序幕 春日野小松原の場、二幕目 太宰館花渡しの場、そして三幕目の吉野川の場の上演です。

国立劇場と言えば、夏になると歌舞伎教室が開かれ、ここで初めて生の歌舞伎を観たという人も多いかもしれません。

そんな思い出の劇場の最後の公演を観てはいかがでしょうか。

◆ 開催日:2023年9月2日(土) ~ 26日(火)

◆ 開催場所:国立劇場 大劇場(東京都千代田区)

◆ 問い合せ:国立劇場チケットセンター

「世界遺産 富岡製糸場の国宝・西置繭所」グランドオープン(群馬県)

2014年6月に、世界遺産に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」。
同じ年に、富岡製糸場の繰糸所と東西2棟の置繭所が国宝に指定されました。
その国宝・西置繭所が足掛け6年に渡る保存整備工事を終え2020年(令和2年)10月3日にグランドオープン、その全貌が公開されました。

富岡製糸場は、明治5年に日本で最初の官営模範工場として誕生、繭から絹糸を作る工場で、完成当時は世界一の製糸工場となりました。日本各地から多くの人が訪れて働いたり見学したり、その知識や技術は各地に伝わり、全国で良質の生糸がたくさん作られるようになったのです。
その後富岡製糸場は民営化され、経営者も変わったものの、昭和62年まで一貫して製糸工場として稼働し続けました。まさに、その操業の歴史は日本の近代製糸発展の象徴でした。

良い生糸を作るには、当然そのもととなる繭が大事です。その繭を置いていた場所が2棟の繭倉庫、そのうちの1棟が西置繭所です。

この西置繭所が、ハウス・イン・ハウスという手法で保存整備されました。外観は、年間生産量が最大だった1974年(昭和49年)当時の様子を復元、その内部はガラスで囲まれ、現代にいながら過去の富岡製糸場西置繭所の有様を間近に見ることができるのです。

そして2階に上がると、そこには大きな繭を入れた袋が積まれています。なんとその重さは15キロもあったというのですから、驚きました。
そしてここに、たぶん日本初ではないかと思われるものがあります。
創作浪曲による音声ガイドです。かつてなにわぶしと言われ、たくさんの人々が高座やラジオで親しみ楽しんだ浪曲、その歴史は富岡製糸場の歴史とかぶります。
メインガイドで解説を聞き知識を得て、浪曲によるスペシャルガイドの物語で、かつての時代におもいをはせることができます。

そして富岡製糸場に行ったら、富岡の町も是非みてきてください。

まずは駅前にある、群馬県立世界遺産センター・「世界を変える生糸の力」研究所。
ここで、ちょっと予備知識を入れておくと、富岡製糸場をより楽しむことが出来ます。

そして町のあちこちには、小さな張り紙のようにそれぞれの通りの名前の由来などが書かれた富岡まちてくサインがあります。探してみてください。
歩き疲れたら小さな公園もあちこちにありますので一休みもOK。

そして、10月11日日曜日には、「とみおかキッチンフェス」が富岡市役所前のしるくひろばで開催されます。市内の各店から美味しいものが大集合です。

また、第2回日本の世界遺産をえがく 全国絵手紙公募展も行なっています。応募締切は、10月30日金曜日です。

富岡の町と富岡製糸場、令和の今と明治のタイムトリップを楽しんでみてはいかがでしょうか。

そうそう、メインガイドも浪曲のスペシャルガイドもアプリからのダウンロードです。スマホ用のイヤフォンも忘れないでくださいね。

康楽館で「リトライ! 風そよぐ町から」上演(秋田県)

秋田県鹿角郡小坂町にある明治の芝居小屋・康楽館。明治43年1910年に建てられ、今年創建百十年を迎えた国重要文化財です。
その創建百十年を記念しての特別公演が「リトライ! 風そよぐ町から」です。
作・演出は、下町かぶき組劇団誠流座長・星 誠流、主演は劇団三峰組座長・三峰 達、そして彼らの師匠であり生きる博多人形とも言われる松井誠が監修という豪華な布陣です。

◆ 公演日程:2020年10月2日(金) 〜 31日(土)

◆ 上演場所:明治の芝居小屋 康楽館(秋田県鹿角郡小坂町)

◆ 問合せ:康楽館

小坂鉱山の厚生施設として建てられた建物は、外観はモダンな洋風、中に入ると回り舞台や珍しい2本の花道を備えた江戸期の伝統的な歌舞伎小屋の洋式を残す日本でも数少ない和洋折衷の芝居小屋です。

その康楽館で、黒鉱製錬の立役者であり日立鉱山を創業した久原房之助の物語が上演されます。
地元の偉人をテーマとした作品で、十和田湖でヒメマスを養殖した和井内貞行を描いた「天空の魚影」に次ぐ第二弾です。

明治の時代、銀の産出量が減り閉山寸前まで追い込まれた小坂鉱山とその閉山の危機を乗り越え新しい製錬所を建設し、後に日本有数の大鉱山にならしめた久原房之助。彼が何度も失敗を繰り返しながらも自分の信じた道を突き進む挫折と再生・そして挑戦の物語が、この「リトライ! 風そよぐ町から」です。

その歴史を、まさに小坂鉱山の厚生施設だった康楽館で上演するのです。
その土地ゆかりの人の物語をゆかりの芝居小屋で観る、とても有意義であり、また楽しい贅沢な時間ではないでしょうか。

小坂町には、康楽館をはじめ、やはり国重要文化財の小坂鉱山事務所や小坂鉄道レールパークなど明治からの近代化産業遺産がたくさんあります。是非時間を作って、それらもみてください。
そしてお腹が空いたら地元の美味しい桃豚も味わうのも良いと思います。小坂町赤煉瓦にぎわい館赤煉瓦倶楽部では、この桃豚の肩ロースをかば焼き風に仕上げた小坂駅弁も販売しています。但し、2日前までの予約が必要となります。

[資料提供 秋田県東京事務所]